サヨナラも言わずに
俺……馬鹿だろ。
こんなこと言って、沢田が生きたいって思えるわけねーじゃん。
今の、お前には味方がいないって、遠まわしに言ってんだから。
「でも、俺はお前のこと心配してるからな。里穂さんほどじゃないけど、学校の人間よりも。あ、そうだ。俺の母さんさ、沢田のこと知ってたぞ。中学の養護教諭だったらしいからな。ほら、これでお前の味方は三人もいる」
……だんだんこれが励ましになってるかわかんなくなってきた。
母さんが言ってたメンタルが強いとダメだって、こういうことか。
反応がないヤツに話しかけ続けるのは、正直キツイもんな。
「なあ、沢田……お前、“篠宮”に会いたいか?」
──ピクッ……
……え?
ウソだろ……
もしかして……
「……篠宮が見つかった」
その言葉と同時に、また沢田の指先が動く。
「里穂さん!」
俺は沢田に声をかけ続けるよりも、里穂さんを呼ぶことを優先させた。
あのままの状態で、沢田に目を開けられると困るから。
「旭くん?どうかした?」