ファインダー越しの瀬川くん


「僕の一瞬の喜びを、あんな素敵な形に切り取ってくれて、ありがとう」


お世辞でもなんでもなく、本当に嬉しそうに瀬川が笑う。


「おーい瀬川!休憩とっくに終わってるぞー」

「あっ、すいませーん!すぐ戻ります」


窓の向こう、グラウンドから聞こえる呼び声に、慌てて振り返った瀬川が答える。

運動部の声は、さすがに二階の教室にもよく届く。


「ちょっとゆっくりしすぎちゃった」


ぺろっと舌を出しておどけてみせる瀬川に、思わずクスッと笑いが溢れる。

途端瀬川の目が驚いたように見開かれ、まじまじと見つめられた。


「山内さんが笑ってるとこ、ちゃんと見たの初めてかも……」


ぽそっと呟かれたその言葉と注がれる視線に、何だか無性に恥ずかしくなる。

注がれ続ける視線に耐え兼ねて俯くと、ハッとしたように瀬川もまた視線をそらした。


「ごめん……何かつい」


心なしか、瀬川の顔が赤い。
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