ファインダー越しの瀬川くん


『写真もいいけどさ、たまにはちゃんと山内さんの目で見てよ』


シャッターに指をかけた状態で、しばらくそのまま固まる。

ただ黙ってファインダー越しに瀬川を見つめ、しばらくして意を決したようにカメラを下ろすと、真っすぐにグラウンドを見つめた。

ホームベースを両足でしっかりと踏みしめる瀬川を、自分の目で見つめる。

最高のシャッターチャンスを逃していることはわかっているが、不思議と後悔は湧かなかった。

瀬川の喜びに溢れる表情を、キラキラ輝くその姿を……ファインダー越しではなく、真っすぐに自分の目で見つめる。


「ホームラン……」


仲間に囲まれて笑う瀬川に小さく呟いてみると、聞こえるはずなんて絶対ないのに、タイミングよく彼が顔を上げた。

何事か大声で叫びながら必死で手を振る姿に、窓枠に手をついて僅かに身を乗り出す。

もういつ雪が降ってもおかしくないような寒風に乗って、声が届いた。
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