ファインダー越しの瀬川くん
まだ写真部が自分一人きりではなかった頃を懐かしく思い出しながら、手に取ったカメラをしばらく眺め、おもむろにファインダーを覗く。
そのまま教室をぐるりと見渡し、レンズをグラウンドに向けた。
テニス部、野球部、サッカー部……と、ゆったりとカメラごと視線を動かして、部活中の生徒達を追いかける。
目当ての人物は、すぐに見つかった。
「今日は、サッカー部か……」
ボールを追いかけて走り回る部員達の中で、一際楽しそうに駆ける人物にピントを合わせる。
校則ギリギリの黒っぽい茶髪をなびかせて器用にボールを操ると、グイグイ敵陣に切り込んでいく姿を必死に追いかけてシャッターを切った。
無我夢中でシャッターを切り続け、彼がゴールポストを割った瞬間には、その歓喜の表情をアップで切り取る。
白い歯を見せて嬉しそうにガッツポーズする彼をファインダー越しに眺めると、カメラを下ろして、いつの間にか詰めていた息を大きく吐き出した。
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