ファインダー越しの瀬川くん
ボールを追って走る彼、味方にパスをする彼、相手チームのパスをカットする彼、真剣な顔でゴールを見据えて真っすぐに敵陣を切り抜けていく彼……。
椅子に座って、液晶画面に表示した先程撮った写真をぼんやりと眺める。
最後に、ゴールを決めた瞬間の喜びに満ちた笑顔を眺めていると、不意に影が差して手元が暗くなった。
「へー、うまいね」
突然聞こえたその声に、驚いて顔を上げると
「さすが写真部」
先程までファインダー越しに眺めていた人物が、すぐ近くで笑顔を浮かべていた。
「これ、さっき僕がゴール決めた時のだよね」
スッと距離を詰める彼に、思わずカメラを胸に抱いて隠すと、慌てて距離を取るように立ち上がる。
「せっ、せっ、瀬川くん……!え、えっと……これは、あの……だから」
驚きのあまり言葉が出てこない。