ファインダー越しの瀬川くん
自分でした想像に泣きそうになりながら、先程撮った写真を全て消去する為に必死で指を動かしていると、スッと伸びてきた手にカメラごと指を包み込むようにして覆われた。
突然の事に、ビクッと大げさなほどに肩が跳ね上がる。
「ちょっと待って」
凛とした声に顔を上げて見れば、瀬川の真剣な瞳とぶつかった。
「あんなにうまく撮れてるのに、消しちゃうなんてもったいないよ」
いつもとは違う、ファインダー越しではない瀬川が、真っ直ぐにこちらを見つめている。
その真剣な瞳が不意にふにゃっと緩んで、カメラを覆っていた手が離れていく。
「せっかくだから、もっと見せて」
そう言って隣の席にストンと腰をおろした瀬川が、ポンポンと椅子を叩く。
その仕草に促されるままゆっくりと椅子に腰を下ろすと、おずおずとカメラを操作して撮った写真を呼び出す。
最初に撮った、ボールを追いかけて走る一枚を表示すると、カメラごとグイっと瀬川に突き出した。