ファインダー越しの瀬川くん

写真を眺めて、楽しげに語る瀬川の言葉に思わず小さく頷き返す。

ファインダー越しではあるけれど、ずっとその様子を見ていた。

パスを受けた瞬間に走り出す瀬川を、徐々に取り囲んでいく相手チーム。

味方も必死で走ってはいるけれどとても追いつけそうになくて、このままボールを取られてしまうのかと思った瞬間に、力強く動いた右足。

真っすぐに飛んだボールが、キーパーの手をすり抜けて綺麗にゴールポストに吸い込まれるその場面を、シャッターを切りながら見つめていた。


「これ見るとさ、あの瞬間の喜びを思い出すっていうか、興奮が戻って来るっていうか……何か、とにかくすごくいい」


顔を上げてニコッと笑った瀬川との距離があまりに近くて、咄嗟に体を離す。

緊張でどんどん高まっていく心音に、カメラを持つ手にギュッと力を込めると、突然瀬川が立ち上がった。


「山内さん、いつも僕のこと撮ってくれてたでしょ?」


唐突なその言葉に、肩がビクッと揺れて視線が泳ぐ。
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