こんな嘘みたいな恋愛あるわけない!
「お前だってわかってねぇだろ!
9年間、会うのを心待ちにしてた最愛のやつに、
再会したらわすれられてる喪失感!絶望感!」
どなられて、はっとする。
確かに、分かってなかった。
でも。
「…………わからないんだよ。
…………思い出せないし、何も聞こえない」
「聞こえない?」
そこではっとした。
「や、わかったから!
コンサート、行かなくてごめん!」
「………伊紅」
「ちゃんと………夏葉のこと、考えるから」
と言うと。
「俺のことだけ、今夜は考えろ」
そう言って、夏葉はやっと離れてくれた。