こんな嘘みたいな恋愛あるわけない!
side 明石夏葉
伊紅がこの街にいるっていうことが分かった。
さっきの、高校生との会話を思い出す。
『櫻木伊紅?!』
『おまえ、ケンカ挑むならやめたほうがいいぞ!』
真顔で言う高校生。
『なんで?そんなにやばいのか?』
『やばいなんてもんじゃねーよ!
族を潰したとか、ハンパねーらしいぞ』
『俺の中学ん時の同級生、ボッコボコにされて、櫻木伊紅って聞くだけでビビってんだよ。信じらんねーけどさ』
あいつは、そんな奴じゃない。
『一瞬で相手を動けなくして、最後に蹴り飛ばすらしいぞ。………………笑って。』
『んなわけねぇ!』
『へ?』
つい、余計なことを言ってしまう。
まるで俺の知らない9年間を見せつけられたようで。
イライラした。
伊紅を守れなかったことに、イラついた。
『あ、ごめん。』
『いや、いいけど…。最近さ、また、噂が立ち始めたんだ。』
『噂?』
『また、ケンカして回ってるって』
伊紅じゃない。
ちがう。