こんな嘘みたいな恋愛あるわけない!
「…………つよ」
麗がボソリとつぶやく。
俺も同感。
正直、喧嘩したら勝てる気がしない。
「………はぁ」
怒ってる場合じゃねえ。
一刻も早く、伊紅を助けに行くべきだ。
そこで、近くに落ちていた雑誌を拾って、
丸めて口元に持ってくる。
「ヤクザのみなさーん!
銃使いましたよねー?!法律違反だよねー!
さっき警察呼んじゃったからさー!
もうすぐ来るよー!」
周りにいたヤクザたちがざわめき出す。
そして。
「ふざけんなてめぇ!」
バカが一人、飛び込んでくる。
「うわっ?!」
それを避ける。
「あーあ~。ダメだよヤクザサーン。
俺に怪我なんてさせていいのー?」
なるべく大声で、
メガネと帽子を外しながら言う。
「俺、芸能人だからこういうの、困るんだよねー。
賠償金、いくらお願いしようかなぁ〜。」
「!」
「明石夏葉じゃねぇの?!」
「えっ?!やばくねぇ?」
一気に逃げ出すヤクザたち。
「……フン。ちょろ」
「でもほんとに怪我はやばいもんね」
隣で麗がうなずいた。