こんな嘘みたいな恋愛あるわけない!
「……大丈夫か?伊紅」
ぎゅっ………と抱きしめる夏葉。
「………ありがとう」
でも、こんなんで済むわけがない。
「…………伊紅ぅぅぅ」
低い低い声が、響く。
「………こわ」
麗が呟く。
でも、本当に怖い。
今の先輩の目は、本当に怖い。
「なんでその男?なんで俺じゃないの?
俺のためにずっといじめに耐えててくれたんでしょ?
その耳、俺を守ってくれたからなんでしょ?
俺への愛でしょ?」
次々とまくし立てられる言葉。
そんなのじゃない。
そこまでの気持ちは、なかった。