こんな嘘みたいな恋愛あるわけない!


「……大丈夫か?伊紅」


ぎゅっ………と抱きしめる夏葉。


「………ありがとう」



でも、こんなんで済むわけがない。



「…………伊紅ぅぅぅ」

低い低い声が、響く。


「………こわ」

麗が呟く。



でも、本当に怖い。

今の先輩の目は、本当に怖い。



「なんでその男?なんで俺じゃないの?

俺のためにずっといじめに耐えててくれたんでしょ?

その耳、俺を守ってくれたからなんでしょ?

俺への愛でしょ?」


次々とまくし立てられる言葉。



そんなのじゃない。

そこまでの気持ちは、なかった。

< 356 / 394 >

この作品をシェア

pagetop