冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~

[2]


 喉が渇く。

 少しでも渇きを紛らわすために、喉の辺りを掻きむしりたかったが、後ろ手に縛られていて叶わない。

 気が狂いそうだった。

 女は無駄だということに気づかずに何度も何度も鎖を引っ張っていたが、ピタリと動きを止めた。

 視界を奪われているせいで、聴覚に神経が集中して、小さな音まで拾い上げる。

 女の耳には、脈打つ血管と心臓の音、そして相手の呼吸まで聞こえていた。

 さらに、嗅覚まで敏感になっている。

 清潔な肌の匂いと、温かな血の香り。

 女は、喉を焼かれるような苦痛に、苦悶の唸り声をもらした。







< 10 / 41 >

この作品をシェア

pagetop