冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
頭と心の意見が合わず、両方に感じるあまりの苦痛の強さに、テーブルに近づいた瑞季はのっている全ての物をなぎ払った。
壊れやすいもの、壊れにくいものーーその全てが床に落ちて派手な音を立てる。
(くそいまいましい)
割れた破片を踏みつけながら、ベッドに近づくと、力なくドサリと座って項垂れた。
生活感のない、この部屋と同じくらい瑞季の心の中は寒々としている。
聖呀からの電話がなければ、瑞季は女吸血鬼と出会わずにすんだ。
そう思うと、八つ当たりしたくなる気持ちと、ここには居たくない気持ちが膨れ上がってくる。
(クソッ! 仕事に行かなくちゃな……)
スマートフォンで時間を確認すると、もう時間はとうに過ぎている。それに、聖呀から見回り地域の住所が届いていた。
素早く確認すると、自分の欲求に負けないように別の出入り口から外に出ると、裏手に停めてある車で走り出した。