冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
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冷たい。
硬い。
喉が痛い。
寂しい。
次々と浮かぶ思いに、彼女は床の上で体を捩った。
感じていた鼓動が聞こえなくなったのに、餓えだけは無くならない。
(誰か……たすけて)
この苦痛から解放して欲しかった。
それが叶わないのなら、あの温かくて濃厚な味で口の中を満たしたい。
男らしく日に焼けた肌に噛みつき、力の入った体に手を這わせたいと思った。力強い腕に抱き締められながら、快感に震える彼の熱い体に胸を擦り付けたい。
そこで、ふと疑問に思った。
(なぜあの熱と鼓動の持ち主が男だと思ったのだろう?)
目隠しをしていて見えないというのに。
もっと深く考えたかったのに、一瞬の正気は高まり続ける苦痛に呑み込まれて消えた。