冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
瑞季は、勢いよく体を起こして悪態をついた。
最悪な事に、目が覚めても夢の中と変わらず瑞季の欲望は固く立ち上がり、そのせいで酷い欲求不満に悩まされている。
自分で慰めることも出来るが、そんな事で終わらせたくなかった。
瑞季は欲望が治まるまで悶々とした気持ちでベッドに座り、性的興奮が治まるような事を考えはじめた。
(彼女は吸血鬼だ。血を飲む化け物で、人狼族の敵であり……オレの敵)
それは変わらない。
こんな気持ちのまま、彼女の様子を見に行くべきじゃないのだろう。
しかし、気がつけば隔離部屋の前に立っていた。
中からは、啜り泣きと唸り声が数十分おきに交互に聞こえてくる。
理性的な人格と本能に呑み込まれている人格とが、現れては消えてを繰り返しているのだ。
長く吸血鬼を見てきたが、そんな瑞季でさえ転生したばかりの吸血鬼を見たことはなかった。
話が本当なら、この時期の吸血鬼は不安定で、常に血を必要としているため転生させた吸血鬼が面倒をみているとか。
自身で血への渇望と殺さないで血を飲む方法をコントロール出来るまでは、社会には出さないはずなのだ。
でなければ、あっという間に人間は殺され絶滅してしまうし、人狼の仕事が増えるばかりで、偏った食物連鎖になってしまう。
とはいえ、昔はそれが当たり前だった。