冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
[2]
鋭い咆哮に、彼女は意識を取り戻した。
体の細胞と本能が危険を感じて目覚めていく。
けれど、同時に血の温かい者の存在を感じて渇望にも火がついて、喉がカラカラに渇いてくる。
早くこの渇きを癒したい。
彼女は獲物に飛びかかろうと思った。
目が見えなくとも、匂いと感覚でどうにかなる。
勢いよく飛びかかった直後、鎖に引き戻されて床に叩きつけられた。
痛みがじわりじわりと広がっていく。
普通なら、これだけの痛みがあったら諦めているだろう。だが、彼女の頭の中にはいまだに靄がかかっているようで、強い欲求しか感じられなかった。
生存本能の中でも、最も大事であろう“食欲”だ。
何度も何度も鎖を引っ張り、手足の自由を得ようともがき苦しむうちに、匂いはどんどん遠ざかりーー。
扉の閉まる音が部屋に響くと共に、彼女は喉を焼く渇きに絶叫した。
心臓の鼓動と血の流れる音を聞いた後では、飢餓感は激痛にも近い効果をもたらしていた。