冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~


[3]



 狼呀が瑞季に約束した日から、二日がたった。

 今、瑞季は狼呀と共にパソコンの前で待機している。

 この二日間は自分の仕事に意識を向けて、彼女の事を考えないように努めた。

 瑞季は狼呀と同じく、雑誌やCMのモデルをしている。

 昨日は朝から夕方までモデルの仕事をして、夕方から夜までモデル仲間とクラブで飲んで過ごした。

 数人の女性に囲まれ、二人の女性からはあからさまな誘いまで受けたが、壁に押し付けてキスをしていたにも関わらず、そこで止めてしまった。

 なぜなら相手は興奮していたが、瑞季自身の体はありえない事に一ミリも興奮しなかったのだ。

 あの女吸血鬼が気になっているせいか?

 そうじゃなければ説明がつかない。

 これまで、豊満な胸を押し付けられたり、舌を絡ませあっている最中に股間のモノが反応しなかった事なんて一度もなかった。

 瑞季は狼呀と違い、セックスに関してオープンな性格だ。

 何人と寝ようが気にしないし、相手の女性が何人の男と寝ていようが気にならない。

 なのに、彼女を意識してからというもの、別の女性に目がいかなくなってしまった。

 寝ても覚めても、あの女吸血鬼が浮かぶーー。

 おかげで毎夜、彼女との中途半端に終わるセックスの夢を見ては、目を覚ますたびに欲求不満が高まっていて、内なる獣まで苛立ってきている。

 そんな時、狼呀から電話があった。

 何か分かったのかと聞こうとしたが、レンが直接話したいという事で、今回テレビ電話で話すことになったのだ。


< 25 / 41 >

この作品をシェア

pagetop