冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
「やあ、揃っているみたいだね」
最初に口を開いたのは横溝レンだった。
画面には栗色のカールした髪に、鮮やかな青い瞳を持つ二十代の男が映っている。
見た目から吸血鬼だとは分からない。人間の目から見たら、そこら辺にいる若い男と何ら変わらないだろう。
何百年と生きているという老いを感じさせない。
ただし、しゃべるたびに唇の間から覗く牙が、彼の存在を強く意識させる。
「まあ、手っ取り早く話そうか。マリアの話だと、君たちは転生したての吸血鬼を捕まえているんだって?」
「ああ……だが、申請書にない吸血鬼だ」
「無許可の吸血鬼? 今はどんな状態なんだい?」
「一言で言えば、血に溺れている。話は通じないし、理性がない」
そう言うと、レンは難しそうな顔をして眉間にシワを寄せた。
「おかしいな……転生したばかりで、そんな状態だとしたら外に出すメイカーはいないよ」
「本当か?」
「そんな状態で放置なんてしていたら、あっという間に僕たちは人間に見つかっていたさ。だからこそ種族存続のために、純血の吸血鬼たちが申請書や独り立ちのルールを決めたんだよ」
「なら、彼女は……」
「君たち人狼も、噂くらいは聞いたことがあるだろ?」
”噂“
思い当たるのは、人狼たちが一蹴してきた噂だけだ。