冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~



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 予告どおりに、レンは日没に現れた。

 まさに金持ちの吸血鬼といえるフェラーリに乗って。

 瑞季も所有しているが、日本に来る前の事で、今は母国の古城の地下に眠っている。

 常にメンテナンスするよう執事たちに頼んでいるため、いつ走らせようと思っても滑らかに走るだろう。

 とはいえ、今はジープに乗りなれてしまったため、瑞季もあまり恋しくはない。

 しかし、若い人狼たちは興味があるのか、レンが車から降りて離れると、次から次へと車に近づいていく。

「僕が戻るまで、仲良く運転してみるといい」

 その言葉に、誰が最初に運転するかと声を上げ始めた。

「おいおい、後悔してもしらないぞ」

「種族関係なく、仲良くするなら子供たちから攻めろって言うだろ? 友好の第一歩への犠牲としては、大した物じゃないさ」

 人間のスピードで歩いてきたレンは、どこか愉しげに笑った。

「しかし、こんないい場所があったとはね。都心へのアクセスが悪くないときたら、高かったんじゃないかい?」

「まあ、安くはないな。見つけるのにも苦労したが、オレたちには自然と広い敷地、頑丈な建物と地下室が必要だから」

「人狼も大変だね。日本は住みづらいんじゃないかい?」

「そこまで酷くないさ。そういう、吸血鬼はどうなんだ?」

 そう口にしてから、瑞季は吸血鬼と世間話をしている自分に驚いた。

「悪くはないね。日本はゴシックファッションとかがあるから、黒い服を着ていても目立たないし、ヴァンパイアのイベントだとしてしまえば、誰も牙のことは気にしないし」

「まったく、吸血鬼は何処の国に行っても好かれていていいな」

「宣伝効果ってやつだね。昔は夜な夜な乙女を狙ってやって来るポマードべたべたの、蒼白い顔にマントを着けたダサいやつって感じだったけど、最近は…………マントもダサい髪型もない、セクシーな男と女。吸血行為はセックスと同じで吸う側も吸われる側も、最高のオーガズムを感じるって広げたからね」

 レンの言うとおりだ。



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