冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
「どうした?」
「悪いな、瑞季。いま、大丈夫か?」
声の主は同じ人狼の仲間である葉山聖呀だった。
軽く返事をしながら瑞季がベッドの縁に腰掛けると、パンティーだけを身につけた彼女が腰に腕を回して背中に胸を押し付けてくる。
「ねぇ……はやく話を終わらせて」
小さな声で甘く囁いた彼女は、片手で瑞季の胸から割れた腹筋へと滑らせると、首にキスをしながらバックルを外そうとしている。
「お前が俺に電話なんて珍しいな。電話の使い方を知らないのかと思ってたよ」
「アホか。使い方ぐらい知ってる。今までは、必要性を感じなかっただけだ」
「ふーん。なら、どうした?」
軽口をたたき合っている間に、バックルとジーンズのボタンが外され、ジッパーへと手が伸びてくる。
たしかに、瑞季自身は消極的な女性より積極的な女性の方が好みだが、状況を考えない自分勝手な相手は大嫌いだった。
『まったく、最近の女は慎みって言葉を知らないのか? 今は電話中だぞ』
公開セックスに興味のない瑞季は、すぐさま彼女の手首を掴んで引きはがすと立ち上がった。
「ちょっとー!」
彼女は不満そうに言ったが、瑞季はスマートフォンを耳と肩で挟みながらジーンズのボタンをはめてバックルを閉め、床に脱ぎ捨てていたTシャツを拾った。