冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~
直後、視界を奪っていた布が、はらりと落ちる。
外してもらえるなんて思ってはおらず、眩しさへの準備をしていなかったせいで、明るさが目を直撃した。咄嗟に目を閉じ、顔を背けたけれど、瞼の裏に感じる明るさは強い。
慣れるまでには、かなりの時間が必要になるだろうと思っているとーー。
動く気配と暗くなる感覚に、男が太陽光か室内灯を遮ってくれたのが分かった。
<ありがとう>
そんな言葉が浮かんだが、今の状況に置いている張本人に向ける言葉ではないと考え直し、開こうとした口を閉じて、代わりにゆっくりと目を開けた。
何度か瞬きをして室内の明るさに慣らし、目の前にいるであろう男へと焦点を合わせーー息をのんだ。
恐ろしい容姿だろうと思っていたのに、男は全くの正反対だった。
焦げ茶色と薄茶、さらに黒い筋が絶妙に混じる髪と淡褐色の瞳。
肌は濃すぎず、程よく日に焼けていて、がっしりとした体型だが、大きすぎてスタイルが悪いってこともない。
ーー完璧。
そんな言葉が思い浮かんだ。