冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~






「おい」

 声をかけられて、自分が彼を見つめていることに遅れて気がついた。
 悔しいことに、声まで素敵だ。

「自分の今の状況が分かっているか?」

 高圧的な言い方と、腕組をして上から見下ろす態度に怒りが芽生える。

「この状況を理解できないような子供に見える?」

 下から睨みつけてやると、男は何が面白いのか、にやりと笑った。

「ずいぶんと気が強いんだな」

「こんな風に扱われて、噛み付かない女がいる?」

「さあな。女を縛った事なんてはじめてだからな。逆に聞くが、怖くないのか?」

 その言葉をじっくり考えてみた。
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