冷たいキスと獣の唸り~時間を巻き戻せたら~





 予定に関しては後日という事になり、軽い別れの挨拶を交わし電話を終えた。

「さて、代わりを果たしにいくか」

 地下駐車場に停めてある自分の車に行くと、瑞季はさっさと車に乗り込みエンジンをかけた。

「待って!」

 エンジンの音に掻き消されながらも、耳に届いた声にバックミラーを見ると、数十分前にベッドに一緒にいた彼女がTシャツとホットパンツ姿で息を弾ませていた。

 しかし、瑞季は車のエンジンを切るどころか、女を無視して車を発進させた。

 そもそも、名前もよく覚えていない女に割く時間などない。

 何より大事な友の代わりを勤めなくてはならないのだから。




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