MAOU LIFE
~MAOU LIFE 17日目~

魔王妃「ゼクス様!」キリッ…
魔王「うむ!」キリッ…
魔王妃「今日は待ちに待った」キリッ…
魔王「うむ!」キリッ…
魔王妃「ハロウィンの日です!」キリッ…
魔王「うむ!」キリッ…
魔王妃「年に一度、合法的に人間から」
魔王「食い物を奪いとれる日だな!」
魔王妃「お菓子代節約です!」キリッ…
魔王「飯代節約だな!」キリッ…

完全武装したゼクスとアーシュが声を高らかに張り切っている今日はハロウィン。魔界・人間界間の冷戦中条約の中の一つ、「トリックオアトリート」。普段は魔界側が人間界に攻撃を行う事が出来ない(反撃は可)が、ハロウィンの日に限って魔界側から攻撃をする事が出来るのである。ただし攻撃をする前に「トリックオアトリート」と宣言し、人間側に「降伏」か「戦い」か選択させる。降伏する時は食べ物(主にお菓子)を差し出し、悪魔はそれを受けとり退かなくてはならない。戦いの時は降伏を拒否する反応を示せば良い(途中で降伏は可能)。

魔王「アーシュ!シャルル!用意はできたか!?」
魔王妃「はい!」キリッ…
魔王女「ほぷぅ!」キリッ…

ただ現在では成人した悪魔はほとんど参加せず、主に幼い小悪魔のみが参加するといった一種の子供会のような行事で、人間界側もほとんどそう認識している。

魔王「いざ出陣!」キリッ…

魔王一家は3世界ゲートに乗り込み、人間界に降り立つ。西の国領土内の街に来てみると、既にたくさんの小悪魔達が3~5人程度のグループに分かれ、各家々を回ってお菓子をゲットしている。

魔王「アーシュ、シャルル、お前達は菓子を奪ってこい。我は飯を奪ってくる」
魔王妃「はい!では一緒に行きまちょうね、シャルルたーん」ウキウキ…
魔王女「ほぷぅ!?」イヤイヤ…

アーシュはシャルルのベビーカーを押して、他の小悪魔達に混じってお菓子をもらいに行った。そしてゼクスは西の国の城へと向かった。

西王「ハロウィンの日が来たか…今度こそは阻止して、むしろ返り討ちにしてくれる!」

西の国王は毎年ゼクスの襲来に泣かされている。城の兵士達で迎え撃とうとするも、いつも兵士達がゼクスの殺気に怖じ気づいて国王は降伏宣言していた。だが今年の王は違った。西の国中から手練れの戦士達を集めて、精鋭部隊を結成していたのだ。その数は100人はいるだろう。

兵士「魔王が城内に乗り込んできました!」
西王「魔王ゼクス…今日が貴様の命日だ!!皆の者、構えよ!」

ゼクスの襲来の声を聞くと、王は戦士達に戦闘の準備をさせる。それと同時に王の間の扉がバンッ!と開けられ、ドス黒いオーラを漂わせるゼクスが入ってきた。

魔王「トリック…オア…トリート!!!!」ゴルァ…
西王「来たな、忌々しい悪魔共の王…ゼクスよ!今日は貴様を亡き者にする為に精鋭達を集めたのだ!ゆけ!魔王ゼクスを討ち取った者には富と名声を与える!」

王の降伏拒否宣言と同時に雄々しい咆哮を上げ戦士達は武器を振り上げ構えながら、ゼクスに突っ込んでいく。そしてゼクスの右手の剛剣の一振りで一人残らず血飛沫を炸裂させて、一瞬で消し飛んだ。後に残ったのは生々しい血の跡と国王ただ1人。

西王「………な、に」ガクブル…
魔王「さて、と……降伏宣言される前に今度こそお前を殺して国中の食料を奪い、この国を地図上から消してやらんとな…」ニヤニヤ…

もともと西の国を良く思っていないゼクスは毎回この国をハロウィンにかこつけて滅ぼそうとしているのだが、最後の最後で降伏宣言を出され、手を引く羽目になっているのだ。まぁ降伏されても食料が手に入るので、どっちに転んでも魔王一家としては良いのだが。

魔王「今年こそは消えて貰うぞ?」
西王「ひっ!!!!こ、ここここ、ここ降伏だ!!!!」ジュンジュワー…

西の国王(51歳)は初めて目の当たりにするゼクスの圧倒的な戦力と自分への殺意、そして顔に向けられた剣の迫力に、年甲斐もなく思わず腰が砕け失禁してしまい、うまく回らない口で降伏宣言をした。

魔王「…情けない」ハァ…
西王「こ、降伏だ!降伏だー!!」ビクビク…

王の間から聞こえる降伏を告げる叫び声に、兵士達は王の間へ急ぐ。そして室内の惨状に顔を引きつらせながら、ゼクスに跪いた。

兵士「た、ただいま王宮菓子を用意しますので少々、お、お待ち下さいませ!」ビクビク…
魔王「菓子とは別に肉・魚・野菜・果実・穀物等の食料をよこせ」
兵士「はっ!ただいま!」

ゼクスの言葉を受けた兵士は急いで厨房に走り、厨房の者達に食料をかき集めさせ、それらを袋や樽に詰めて、木製の荷車に乗せゼクスのもとに戻ってきた。

兵士「菓子の用意が出来るまで、どうぞごゆっくりとされて下さい…」
魔王「うむ」

それから3時間程、ゼクスは王の間ではなく客間で珈琲を飲みながらプリン(リクエスト)を食べていた。プリンを106個目のおかわりをした所で、菓子が出来上がったらしい。ゼクスは菓子を荷車に積み込み、城を出て行った。

魔王妃「ゼクス様ー!」
魔王女「ほぷぅ!」キラキラ…
魔王「今年も大量だった」ゲフッ…
魔王妃「あ、ゼクス様ズルいですー!プリンの匂いしますよー?1人でいっぱい食べたんですねー?」
魔王「ちゃんとお前への土産はあるぞ?」ホレ…
魔王妃「はうー♪マカロンやクッキーや生チョコがこんなにいっぱい!ありがとうございます、ゼクス様♪」イチャイチャ…

3世界ゲート前で3人は合流し、ゼクスはアーシュに王宮菓子を渡し、シャルルをベビーカーから抱き上げる。シャルルは大きなペロキャンを舐めている。

魔王女「ほぷぅ♪」ペロペロ…
魔王「飴を貰ったのか、良かったなシャルル。ん?我にもくれるのか?」ペロペロ…

大好きなゼクスに抱っこされて上機嫌になったシャルルは自分の舐めていた飴をゼクスの前に差し出し、ゼクスは優しく微笑みながらそれを舐める。

魔王妃「シャルルたんが可愛いから、いっぱい飴くれたんですよー♪」ニコニコ…

アーシュがハンドバックの中をゼクスに見せると、棒付き飴がぎっしりと詰まっていた。

魔王「これでしばらく食料や菓子代には困らんな」

こうして大量の戦利品を手に入れた魔王一家は帰っていった。そして3日後。

魔王妃「ゼクス様ー、お菓子無くなったんでオムツ買うついでに買いに行ってきますねー?」
魔王「………早くね?」

~MAOU LIFE 17日目~ 終
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