MAOU LIFE
~MAOU LIFE 42日目~

魔王「コラー!待たんかシャルルー!」
魔王女「ほっぷぅ!」アセアセ…

今日も魔王城の朝は騒がしい。城内を猿列車で爆走するシャルルをゼクスが追いかけていた。

魔王「お前それでも我の娘かー!」
魔王女「ほぷーーーーーーぅ!!!!」

いつもはゼクスにべったりなシャルルも今日という日だけはゼクスから逃げ回る。逃亡途中でデスとすれ違った。

魔王「あっ!デス!お前の鎖でシャルルを捕まえろー!」
死神「えっ!?あっ、は、はい!」ジャラッ…
魔王女「ほぷぅ!?」

デスは大鎌の鎖を飛ばし、シャルルが乗る猿列車を捕らえようとする。しかし飛んできた鎖をシャルルはガラガラで見事にはじき返す。

死神「何っ!?」
魔王「なっ…!?」

シャルルの見事なガラガラ捌きに呆気にとられた2人の隙をつき、シャルルは一気に距離を離す。

魔王「流石は我が娘…っと感心している場合ではなかった!」ハッ…
死神「魔王様、魔王女様が何か悪戯でもされたのですか?」
魔王「今日はシャルルの予防接種の日でな」
死神「あぁ、それで…」ナットク…

毎年予防接種の日になると泣き叫ぶシャルルを抱っこしたゼクスが病院に連れて行く光景が見られるのだが、今年のシャルルは違った。ゼクスが悪夢の中から持ち帰った猿列車を移動用の玩具として与えていた為、シャルルは逃げるという選択肢が出来たのだ。

魔王「デス、お前は回り込め!挟み撃ちにするぞ!追いかけっこは終わりだシャルル!」

ようやく追いついたゼクスはデスに指示し、挟み撃ちでシャルルを捕まえようとする。

死神「魔王女様!覚悟!」バッ…
列車「うわーー!?」キキーッ…
魔王「…ムッ。おい、エテ公…シャルルはどこにいった?」ゴルァ…

挟み撃ちは成功したが、肝心のシャルルがいない。

列車「途中で降りていきましたが…」ガクブル…
魔王「どこで降ろした?」ゴルァ…
列車「そこの扉の前です」ブルブル…
死神「魔王女様……」ハァ…

そこは女性用更衣室だった。中からは声が聞こえ、使用中である事がわかる。

死神「こういう姑息なところとか、魔王様の血を目一杯受け継いでますよねー」
魔王「うむ、流石は我が娘」キリッ…

ゼクスは更衣室の扉をノックする。中からは返事が返ってきたので、ゼクスが中にシャルルがいるはずだから連れて来てくれと言うと、はいと返事があった。それから突然室内から物が倒れたりバタバタとした足音が聞こえてきた。しばらくするとガチャっとドアが開き、泣き叫ぶシャルルを捕獲した牛獣人の女性が出てきた。

魔王「すまんな」
牛女「いえ!陛下の命令は絶対なんで!」キリッ…
死神「…っ、ふ、服くらい着ろ!」チラチラ…
牛女「デス様!これは申し訳ありません!」キリッ…

その女性は上半身裸だった為にデスはやや前屈みになりながら後ろを向くが、時々振り返りチラチラと視線を豊満な胸に向ける。

魔王「確か…お前は第8騎士団所属のミノア…だったな?」
牛女「か、感激です!私のような下級騎士でも陛下に覚えて頂けて!光栄の極みです!」キリッ…
魔王「う、うむ。それではシャルル、病院に行くぞ」
魔王女「ほ!ほぷーぅ!」イヤー…

ゼクスはミノアからシャルルを受け取ると抱っこベルトでしっかり固定して踵を返す。

死神「全く…恥じらいはないのか…。しかし、よく覚えていましたね?感心しましたよ」
魔王「5~6年前の騎士団就任式の時にやたら声がデカくて暑苦しい女がいてな」
死神「あぁ、そう言えば居ましたね、どこかのスポーツ選手みたいな女騎士。それが先ほどのミノアという者ですか」
魔王「うむ。あーゆータイプの兵はよく居るが、女の兵で暑苦しいのはあやつしかおらん」

ミノアの話をしながらゼクスは魔王の間に戻る。シャルルの保険証と健康手帳を取りに来たのだ。

魔王妃「あっ、ゼクス様、シャルルたん見つかったんですね?」
魔王「うむ。これから病院の日だけは猿を隠しておかんとな」
魔王妃「ゼクス様、ではこれとこれを。シャルルたーん、イイコにちてるんでちゅよー?」スッ…
魔王女「ほーぷーぅ!」バタバタ…
魔王「さ、行くぞ、シャルル」
魔王女「ほぷぅ!ほぷぅ!ほぷぅ!」ギャー…

ぎゃん泣きするシャルルをポンポンしながらゼクスは病院に向かった。その後、注射から帰ってきたシャルルは完全に抜け殻状態だった。

~MAOU LIFE 42日目~ 終
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