MAOU LIFE
~MAOU LIFE 43日目~
勇者「魔王ゼクス!勝負だ!!!!」バンッ…
魔王「ぶーん」ブーン…
魔王女「ほぷぅ!」キャッキャッ…
魔王妃「良かったでちゅねーシャルルたーん」ニコニコ…
勇者「……え…?」ヒクッ…
ゼクスに挑戦しにきた勇者は、おおよそ魔王らしくない魔王の姿を見て顔が引きつる。それもそのはず。ゼクスはシャルルを高い高いの状態で後ろ歩きして、ブーン遊びをしていたからだ。そして極めつけはその表情。威厳ある鋭い眼光ではなく、可愛い愛娘を見つめる顔面土砂崩れを起こしたデレデレした顔。どんなに恐ろしい鎧を纏っていても、とてもじゃないが魔王と呼べる姿ではない。
勇者「………こんなのが魔王なのか?」ヒクヒク…
魔王「ぶーーーーん」ブーン…
魔王女「ほぷぅ!ほっぷぅ!」キャッキャッ…
魔王「ぶーーーー………ん?誰だお前?」キリッ…
魔王妃「勝負とかなんとか言ってましたっけ?」
たまたまゼクスの視界に勇者の姿が目に入り、土砂崩れを起こしていた顔面は一瞬で整備された。
勇者「えっ…?勇者だけど…あぁ、いや、もういいや…」ハァ…
勇者は戦意を喪失し、トボトボと引き返す。
魔王「最近の勇者は軟弱者が多いな」
勇者「…俺のどこが軟弱と言うんだ!?」ピクッ…
ゼクスの一言にイラッとした勇者は振り返り、大声で聞き返す。
魔王「大方、我のこの姿を見て心が折れたのであろう?たかだかそれぐらいで本懐を遂げる事も諦めるとは。それを軟弱と言わずして何と言う?」
勇者「そっ、それは!けど!そんな育児中の情けない姿を見て戦意喪失しない方がおかしいわ!」
魔王妃「…情けない姿…ですって?」ゴゴゴゴゴ…
育児を頑張る夫を侮辱されて、アーシュは今までに見た事もない位の巨大な殺気を溢れさせる。その殺気は普段ゼクスの放つものとほぼ同格だった。
勇者「なっ…なんだ…この凶悪な殺気は…。なんでこんなギャルみたいなのが」
魔王妃「私は魔王妃アーシュ…ゼクス様の妻です!」ゴゴゴゴゴ…
勇者「えぇっ!?魔王妃っ!?こんな頭悪そうな見た目の女が!?魔王って趣味悪いな…」
魔王「…頭が悪い?アーシュが…趣味が悪い…だと?」ゴゴゴゴゴ…
勇者がとっさに言ったアーシュの悪口にゼクスも本気で切れた。その殺気はアーシュが放つものとは比べ物にならない。
勇者「ひぃっ!」ガクブル…
魔王「しっかりと歯を食いしばれ…今すぐこの世から魂ごと消し飛ばしてくれる…」ゴゴゴゴゴ…
ゼクスの身体が徐々に巨大な禍々しい悪魔竜の姿へと変化していく。翼が城の壁を突き破る。
死神「この激しい揺れ…そしてこの禍々しい気は…まさか!」
魔王夫妻の怒り、そしてゼクスの悪魔竜変化により、城は激しく揺れ崩れかけていた。
勇者「うっうわぁあぁあぁぁ!!!!!!」
死神「魔王様っ!」バンッ…
デスが魔王の間に駆け付け、扉を開けるとそこには変化途中のゼクスと、その側で翼を広げて巨大な邪悪なオーラと赤い雷を纏うアーシュ、そして2人の前には腰が砕けて恐怖におののく勇者がいた。部屋の隅にはリリムがシャルルを抱きかかえて避難している。
死神「魔王様!魔王妃様!お止め下さい!城が崩壊してしまいます!!」
魔王妃「黙りなさい…デス」ギロッ…
魔王「貴様も滅されたくなくば…下がれ」ゴゴゴゴゴ…
死神「2人とも本気だ…一体何が…。ん?おい!そこの人間!貴様一体何をした!!!?」ゴルァ…
デスは床に崩れている勇者の胸倉を掴み、問いただすと、経緯を話した。
死神「何だと……貴様そんな事を……もう駄目だ、この2人は貴様を消すだけでは納まらんな。貴様の国…下手をすれば人間界をも消しかねんぞ…」
勇者「そんなっ!それぐらいで!?」
死神「それぐらいだと…?あの2人は魔界一のバカップルだ。更に魔界最強の実力者とその奥方様だ…。その2人を悪く言ったらどうなるかくらい、簡単に想像つくだろう」
勇者「どうやったら止められるんだ!?」
死神「まだ幸い魔王妃様は魔力を溜めている最中だし、魔王様も変化の途中…。今すぐ土下座して思いつく限りの謝罪をしろ。特に金銭的な話を絡めると話を聞くかもしれん」
勇者「土下座!?勇者のこの俺が!?」
死神「守るべき世界を逆に滅ぼした伝説の勇者になりたいのか?」
デスは勇者に謝罪を勧めたが渋っていたので、このままだと不名誉な勇者になると脅すと、勇者は震える足腰でなんとか正座し渋々土下座した。
勇者「もっ!申し訳ありませんでした!」
魔王妃「何を今更…」
魔王「星ごと消える覚悟は出来たか?」
2人は人間界ごと消すつもりだったようで、勇者は頭の中に不名誉な称号がグルグルと回る。
死神「どうした?それだけか?」
勇者「どうすれば良いんだ…金と言っても俺は国際問題を解決出来る程の額は持っていないし…」
死神「なら国を巻き込むしかあるまい?」
勇者「勇者の権限でもそこまでは…」
死神「なら諦めろ」
勇者「くっ……もう仕方ない…魔王ゼクス、いやゼクス様!どうか怒りをお鎮め下さい!」
それから勇者はゼクスに国際的な話を始めた。内容はただでさえ不平等な条件なのに、その不平等さに更に拍車をかけるものだった。魔界からの輸入価格の大幅引き上げ、また魔界への輸出価格の大幅引き下げ、駐屯地の設置の許可また敷地面積の拡大、魔界大使館の設置、魔界からの移民の受け入れ許可等、勇者の権限を遥かに越えた内容にゼクスは悪魔竜への変化を途中で止めた。続いて男性の家事や育児に対しての賞賛を話すと、アーシュも魔力膨張を停止させた。
死神「2人が止まったぞ?さぁ、もう一押しだ」
勇者「先程は誠に御無礼致しました!申し訳ありませんでした!どうかこの条件で怒りをお鎮め下さい!」
魔王妃「…これに懲りたら二度とゼクス様を侮辱しない事です」プシュー…
魔王「その条件、貴様が忘れぬうちに今すぐ我と契約せよ」
勇者「では許し…」
魔王「契約を結べば許してやる」
勇者はゼクスと契約をし、身体に魔王家の刻印が刻まれた。デスは早速契約書類を作成し、勇者に直筆署名と血判を押させた。それを確認すると、いつものゼクスの姿に戻り、デスに勇者の出身国の国王宛てに書類を郵送手続きをさせた。
魔王「…何を言われようが、お前の国の使者が約束したのだ。こちらはそれでやらせて貰う。もしその条件が飲めないのであれば、条約違反として国を滅ぼす」ピッ…
死神「あの男の国の王からですか?」
魔王「うむ。あの契約は勇者が勝手にやった事だから無効だと抜かしておった。契約を結んだ以上、破れば国が滅亡するという違反に対する処罰項目を突き付けてやったら黙ったわ」
死神「それで、あの男は?」
魔王「指名手配されているらしい」
勇者は結局『命惜しさに国を売った伝説の勇者』として全国民に認識されたのだった。
~MAOU LIFE 43日目~ 終
勇者「魔王ゼクス!勝負だ!!!!」バンッ…
魔王「ぶーん」ブーン…
魔王女「ほぷぅ!」キャッキャッ…
魔王妃「良かったでちゅねーシャルルたーん」ニコニコ…
勇者「……え…?」ヒクッ…
ゼクスに挑戦しにきた勇者は、おおよそ魔王らしくない魔王の姿を見て顔が引きつる。それもそのはず。ゼクスはシャルルを高い高いの状態で後ろ歩きして、ブーン遊びをしていたからだ。そして極めつけはその表情。威厳ある鋭い眼光ではなく、可愛い愛娘を見つめる顔面土砂崩れを起こしたデレデレした顔。どんなに恐ろしい鎧を纏っていても、とてもじゃないが魔王と呼べる姿ではない。
勇者「………こんなのが魔王なのか?」ヒクヒク…
魔王「ぶーーーーん」ブーン…
魔王女「ほぷぅ!ほっぷぅ!」キャッキャッ…
魔王「ぶーーーー………ん?誰だお前?」キリッ…
魔王妃「勝負とかなんとか言ってましたっけ?」
たまたまゼクスの視界に勇者の姿が目に入り、土砂崩れを起こしていた顔面は一瞬で整備された。
勇者「えっ…?勇者だけど…あぁ、いや、もういいや…」ハァ…
勇者は戦意を喪失し、トボトボと引き返す。
魔王「最近の勇者は軟弱者が多いな」
勇者「…俺のどこが軟弱と言うんだ!?」ピクッ…
ゼクスの一言にイラッとした勇者は振り返り、大声で聞き返す。
魔王「大方、我のこの姿を見て心が折れたのであろう?たかだかそれぐらいで本懐を遂げる事も諦めるとは。それを軟弱と言わずして何と言う?」
勇者「そっ、それは!けど!そんな育児中の情けない姿を見て戦意喪失しない方がおかしいわ!」
魔王妃「…情けない姿…ですって?」ゴゴゴゴゴ…
育児を頑張る夫を侮辱されて、アーシュは今までに見た事もない位の巨大な殺気を溢れさせる。その殺気は普段ゼクスの放つものとほぼ同格だった。
勇者「なっ…なんだ…この凶悪な殺気は…。なんでこんなギャルみたいなのが」
魔王妃「私は魔王妃アーシュ…ゼクス様の妻です!」ゴゴゴゴゴ…
勇者「えぇっ!?魔王妃っ!?こんな頭悪そうな見た目の女が!?魔王って趣味悪いな…」
魔王「…頭が悪い?アーシュが…趣味が悪い…だと?」ゴゴゴゴゴ…
勇者がとっさに言ったアーシュの悪口にゼクスも本気で切れた。その殺気はアーシュが放つものとは比べ物にならない。
勇者「ひぃっ!」ガクブル…
魔王「しっかりと歯を食いしばれ…今すぐこの世から魂ごと消し飛ばしてくれる…」ゴゴゴゴゴ…
ゼクスの身体が徐々に巨大な禍々しい悪魔竜の姿へと変化していく。翼が城の壁を突き破る。
死神「この激しい揺れ…そしてこの禍々しい気は…まさか!」
魔王夫妻の怒り、そしてゼクスの悪魔竜変化により、城は激しく揺れ崩れかけていた。
勇者「うっうわぁあぁあぁぁ!!!!!!」
死神「魔王様っ!」バンッ…
デスが魔王の間に駆け付け、扉を開けるとそこには変化途中のゼクスと、その側で翼を広げて巨大な邪悪なオーラと赤い雷を纏うアーシュ、そして2人の前には腰が砕けて恐怖におののく勇者がいた。部屋の隅にはリリムがシャルルを抱きかかえて避難している。
死神「魔王様!魔王妃様!お止め下さい!城が崩壊してしまいます!!」
魔王妃「黙りなさい…デス」ギロッ…
魔王「貴様も滅されたくなくば…下がれ」ゴゴゴゴゴ…
死神「2人とも本気だ…一体何が…。ん?おい!そこの人間!貴様一体何をした!!!?」ゴルァ…
デスは床に崩れている勇者の胸倉を掴み、問いただすと、経緯を話した。
死神「何だと……貴様そんな事を……もう駄目だ、この2人は貴様を消すだけでは納まらんな。貴様の国…下手をすれば人間界をも消しかねんぞ…」
勇者「そんなっ!それぐらいで!?」
死神「それぐらいだと…?あの2人は魔界一のバカップルだ。更に魔界最強の実力者とその奥方様だ…。その2人を悪く言ったらどうなるかくらい、簡単に想像つくだろう」
勇者「どうやったら止められるんだ!?」
死神「まだ幸い魔王妃様は魔力を溜めている最中だし、魔王様も変化の途中…。今すぐ土下座して思いつく限りの謝罪をしろ。特に金銭的な話を絡めると話を聞くかもしれん」
勇者「土下座!?勇者のこの俺が!?」
死神「守るべき世界を逆に滅ぼした伝説の勇者になりたいのか?」
デスは勇者に謝罪を勧めたが渋っていたので、このままだと不名誉な勇者になると脅すと、勇者は震える足腰でなんとか正座し渋々土下座した。
勇者「もっ!申し訳ありませんでした!」
魔王妃「何を今更…」
魔王「星ごと消える覚悟は出来たか?」
2人は人間界ごと消すつもりだったようで、勇者は頭の中に不名誉な称号がグルグルと回る。
死神「どうした?それだけか?」
勇者「どうすれば良いんだ…金と言っても俺は国際問題を解決出来る程の額は持っていないし…」
死神「なら国を巻き込むしかあるまい?」
勇者「勇者の権限でもそこまでは…」
死神「なら諦めろ」
勇者「くっ……もう仕方ない…魔王ゼクス、いやゼクス様!どうか怒りをお鎮め下さい!」
それから勇者はゼクスに国際的な話を始めた。内容はただでさえ不平等な条件なのに、その不平等さに更に拍車をかけるものだった。魔界からの輸入価格の大幅引き上げ、また魔界への輸出価格の大幅引き下げ、駐屯地の設置の許可また敷地面積の拡大、魔界大使館の設置、魔界からの移民の受け入れ許可等、勇者の権限を遥かに越えた内容にゼクスは悪魔竜への変化を途中で止めた。続いて男性の家事や育児に対しての賞賛を話すと、アーシュも魔力膨張を停止させた。
死神「2人が止まったぞ?さぁ、もう一押しだ」
勇者「先程は誠に御無礼致しました!申し訳ありませんでした!どうかこの条件で怒りをお鎮め下さい!」
魔王妃「…これに懲りたら二度とゼクス様を侮辱しない事です」プシュー…
魔王「その条件、貴様が忘れぬうちに今すぐ我と契約せよ」
勇者「では許し…」
魔王「契約を結べば許してやる」
勇者はゼクスと契約をし、身体に魔王家の刻印が刻まれた。デスは早速契約書類を作成し、勇者に直筆署名と血判を押させた。それを確認すると、いつものゼクスの姿に戻り、デスに勇者の出身国の国王宛てに書類を郵送手続きをさせた。
魔王「…何を言われようが、お前の国の使者が約束したのだ。こちらはそれでやらせて貰う。もしその条件が飲めないのであれば、条約違反として国を滅ぼす」ピッ…
死神「あの男の国の王からですか?」
魔王「うむ。あの契約は勇者が勝手にやった事だから無効だと抜かしておった。契約を結んだ以上、破れば国が滅亡するという違反に対する処罰項目を突き付けてやったら黙ったわ」
死神「それで、あの男は?」
魔王「指名手配されているらしい」
勇者は結局『命惜しさに国を売った伝説の勇者』として全国民に認識されたのだった。
~MAOU LIFE 43日目~ 終