MAOU LIFE
魔王様の側近、右大臣デスと申します。
~MAOU LIFE 7日目~
魔王の間の玉座脇で、端正な顔立ちの黒スーツを綺麗に着こなした男が魔王に手帳を開きながら一方的に話している。彼の名は死神デス。魔王ゼクスの側近であり、右大臣だ。
死神「魔王様、本日のご予定についてです」
普段は秘書的な役割が強い。
死神「本日10時から灼熱地獄への視察、12時から人間界の西部の国で国王との冷戦中安全保障条約についての会合、16時から…(以下略)。宜しいで……………」
デスが手帳から玉座の方へ目をやると、ゼクスが居なかった。そして開け放たれた扉の先に走り去る魔王の後ろ姿が目にうつる。
死神「………また逃げたか」
パタン…と手帳を閉じるとデスは柄の部分に鉄球付きの鎖がついた大鎌を召還した。
死神「魔王様ぁあぁあぁぁ!!!いい加減にして下さい!!!」ダダッ…
鎖をブンブンと振り回し、デスはゼクスの後を追う。
死神「あなたという方はどうしていつもいつもお逃げになるのですかー!!!」
魔王「人間界…のっ…西部の国王がっ…面倒なのだっ!!!あと…灼熱地獄用のっ…鎧はっ…メンテ中によりっ…!!まだ行きたくはっ…ない!!!」
死神「し・ご・と…でしょ!!!」
デスはゼクスに向けて鉄球を何度も放つ。そしてそれをゼクスは振り返る事なく全てをかわす。その攻防戦が十数分続いた。
死神「くっ…流石は魔界最強!!!私ごときの鎖にはかかる訳がないか…!!!………ハッ!!!?」
死神は足と攻撃の手を止め、急に立ち止まり振り返る。そして慌てた様子で魔王の間の方に向かって走り出した。
魔王「…何だ?…諦めたのか?」
魔王も背後の攻撃の気配が消え、立ち止まり振り返る。何故デスが慌てて戻っていったのか不思議に感じながらも、ゼクスはそのまま窓から城外へ出ようとしたが、突然魔王の間の方から死神の声が聞こえた。
死神「お…王女様!!どうか、どうかそこから動かないで下さい!!」
魔王「…!?シャルルがどうした!?」
死神「危ないですからどうか!…あっ!」
魔王「…!シャルル!!待っておれ!父がいま行くぞ!」
ゼクスが慌てて魔王の間に戻り扉を抜けた瞬間、首・胴・翼・腕・足に鎖がグルグルと巻きついた。
魔王「しまった…!罠か…!」
死神「こうでもしないと捕まえられませんからね」
魔王「おのれ…だが、デス。我を甘く見過ぎておるようだな?この程度の鎖…」
死神「えぇ、分かっております。ですから…」
デスが玉座脇のテーブルに置いてある2つのベルの内、小さめのベルを手に取り、チリンチリーンと鳴らした。
魔王「そ…それは!」
夢魔「お呼びでしょうか、坊ちゃま」
ベルが鳴ってから数十秒後、裏口からメイド服を纏った、美しく妖艶な夢魔が現れた。
夢魔「まぁ…!坊ちゃま…それにデス様…これは…一体?」
魔王「ば…ばぁや!…デス…貴様汚いぞ」
死神「なんとでも仰って下さい。…リリム殿、魔王様がまた御公務を放り出し、逃亡を図りました」
夢魔「まぁ!…坊ちゃま、いけませんよ?坊ちゃまはこの魔界を担う魔王なのですから、お務めはしっかり果たさなければなりません!めっ…ですよ?」
魔王「ばぁや…違うのだ、これは…その…」アタフタ…
デスが鎖を解くと、リリムはゼクスの前まで歩いて行った。
夢魔「こんな事では私も先代魔王様に申し訳が立ちません。それに…」
リリムはベビーベッドで大人しく竜のヌイグルミと遊ぶシャルルの方を向く。
夢魔「お嬢様に『父』としても『魔王』としてもお背中をお見せする事が出来ませんよ?」
ゼクスはいつの間にか正座をして俯き、リリムはその頭を撫でていた。デスはリリムのお説教をうんうん…と深く頷きながら聞いていた。
死神「流石は魔王様の乳母であり、教育係のリリム殿。さしもの魔王様も頭が上がらない唯一の存在。私の話もこれぐらい素直に聞いて下されば良いのに…」ウルッ…
デスはゼクスを追いかけ回し、説教していた事を思い出し、目に涙を溜めていた。
夢魔「…では、良いですか、坊ちゃま?ちゃんと立派にお務めを果たしてくるのですよ?」
魔王「う…うむ。…ところでいい加減、その『坊ちゃま』というのはやめてくれないか?」
夢魔「何を仰います!坊ちゃまは私にとってはいつまでも可愛い坊ちゃまですよ?」
魔王「くっ…」
リリムはゼクスの頭を撫で、優しい微笑みを向ける。
魔王妃「あの…もう出てきても良いですか?そろそろシャルルたんのミルクを…」
裏口からオドオドとアーシュが顔を覗かせる。てデスは振り返り、笑顔で返した。
死神「王妃様、お騒がせして申し訳ありませんでした。もう大丈夫ですよ」
そしてヌイグルミと遊ぶシャルルの方に近づき、笑顔で覗き込む。
死神「王女様も、これからお食事のところ、申し訳ありませんでした。それから、魔王様をお借りしま…ブッ!!」ガンッ…
魔王女「ほぷぅ!」プンスコ…
シャルルが手に持っていたガラガラを顔に思いっ切り投げつけられたデス。ぶつけられた瞬間、綺麗な顔立ちが一瞬だけ不細工な顔に変形したが、すぐ元通りの顔に戻った。それを見てアーシュが慌ててデスに謝り、シャルルに注意した。
死神「イタタ…とにかく魔王様、もう時間が押してますので、すぐ灼熱地獄に参りますよ?」
魔王「…はい」
こうして今日の公務は無事にこなされていくのであった。
~MAOU LIFE 7日目~ 終
魔王の間の玉座脇で、端正な顔立ちの黒スーツを綺麗に着こなした男が魔王に手帳を開きながら一方的に話している。彼の名は死神デス。魔王ゼクスの側近であり、右大臣だ。
死神「魔王様、本日のご予定についてです」
普段は秘書的な役割が強い。
死神「本日10時から灼熱地獄への視察、12時から人間界の西部の国で国王との冷戦中安全保障条約についての会合、16時から…(以下略)。宜しいで……………」
デスが手帳から玉座の方へ目をやると、ゼクスが居なかった。そして開け放たれた扉の先に走り去る魔王の後ろ姿が目にうつる。
死神「………また逃げたか」
パタン…と手帳を閉じるとデスは柄の部分に鉄球付きの鎖がついた大鎌を召還した。
死神「魔王様ぁあぁあぁぁ!!!いい加減にして下さい!!!」ダダッ…
鎖をブンブンと振り回し、デスはゼクスの後を追う。
死神「あなたという方はどうしていつもいつもお逃げになるのですかー!!!」
魔王「人間界…のっ…西部の国王がっ…面倒なのだっ!!!あと…灼熱地獄用のっ…鎧はっ…メンテ中によりっ…!!まだ行きたくはっ…ない!!!」
死神「し・ご・と…でしょ!!!」
デスはゼクスに向けて鉄球を何度も放つ。そしてそれをゼクスは振り返る事なく全てをかわす。その攻防戦が十数分続いた。
死神「くっ…流石は魔界最強!!!私ごときの鎖にはかかる訳がないか…!!!………ハッ!!!?」
死神は足と攻撃の手を止め、急に立ち止まり振り返る。そして慌てた様子で魔王の間の方に向かって走り出した。
魔王「…何だ?…諦めたのか?」
魔王も背後の攻撃の気配が消え、立ち止まり振り返る。何故デスが慌てて戻っていったのか不思議に感じながらも、ゼクスはそのまま窓から城外へ出ようとしたが、突然魔王の間の方から死神の声が聞こえた。
死神「お…王女様!!どうか、どうかそこから動かないで下さい!!」
魔王「…!?シャルルがどうした!?」
死神「危ないですからどうか!…あっ!」
魔王「…!シャルル!!待っておれ!父がいま行くぞ!」
ゼクスが慌てて魔王の間に戻り扉を抜けた瞬間、首・胴・翼・腕・足に鎖がグルグルと巻きついた。
魔王「しまった…!罠か…!」
死神「こうでもしないと捕まえられませんからね」
魔王「おのれ…だが、デス。我を甘く見過ぎておるようだな?この程度の鎖…」
死神「えぇ、分かっております。ですから…」
デスが玉座脇のテーブルに置いてある2つのベルの内、小さめのベルを手に取り、チリンチリーンと鳴らした。
魔王「そ…それは!」
夢魔「お呼びでしょうか、坊ちゃま」
ベルが鳴ってから数十秒後、裏口からメイド服を纏った、美しく妖艶な夢魔が現れた。
夢魔「まぁ…!坊ちゃま…それにデス様…これは…一体?」
魔王「ば…ばぁや!…デス…貴様汚いぞ」
死神「なんとでも仰って下さい。…リリム殿、魔王様がまた御公務を放り出し、逃亡を図りました」
夢魔「まぁ!…坊ちゃま、いけませんよ?坊ちゃまはこの魔界を担う魔王なのですから、お務めはしっかり果たさなければなりません!めっ…ですよ?」
魔王「ばぁや…違うのだ、これは…その…」アタフタ…
デスが鎖を解くと、リリムはゼクスの前まで歩いて行った。
夢魔「こんな事では私も先代魔王様に申し訳が立ちません。それに…」
リリムはベビーベッドで大人しく竜のヌイグルミと遊ぶシャルルの方を向く。
夢魔「お嬢様に『父』としても『魔王』としてもお背中をお見せする事が出来ませんよ?」
ゼクスはいつの間にか正座をして俯き、リリムはその頭を撫でていた。デスはリリムのお説教をうんうん…と深く頷きながら聞いていた。
死神「流石は魔王様の乳母であり、教育係のリリム殿。さしもの魔王様も頭が上がらない唯一の存在。私の話もこれぐらい素直に聞いて下されば良いのに…」ウルッ…
デスはゼクスを追いかけ回し、説教していた事を思い出し、目に涙を溜めていた。
夢魔「…では、良いですか、坊ちゃま?ちゃんと立派にお務めを果たしてくるのですよ?」
魔王「う…うむ。…ところでいい加減、その『坊ちゃま』というのはやめてくれないか?」
夢魔「何を仰います!坊ちゃまは私にとってはいつまでも可愛い坊ちゃまですよ?」
魔王「くっ…」
リリムはゼクスの頭を撫で、優しい微笑みを向ける。
魔王妃「あの…もう出てきても良いですか?そろそろシャルルたんのミルクを…」
裏口からオドオドとアーシュが顔を覗かせる。てデスは振り返り、笑顔で返した。
死神「王妃様、お騒がせして申し訳ありませんでした。もう大丈夫ですよ」
そしてヌイグルミと遊ぶシャルルの方に近づき、笑顔で覗き込む。
死神「王女様も、これからお食事のところ、申し訳ありませんでした。それから、魔王様をお借りしま…ブッ!!」ガンッ…
魔王女「ほぷぅ!」プンスコ…
シャルルが手に持っていたガラガラを顔に思いっ切り投げつけられたデス。ぶつけられた瞬間、綺麗な顔立ちが一瞬だけ不細工な顔に変形したが、すぐ元通りの顔に戻った。それを見てアーシュが慌ててデスに謝り、シャルルに注意した。
死神「イタタ…とにかく魔王様、もう時間が押してますので、すぐ灼熱地獄に参りますよ?」
魔王「…はい」
こうして今日の公務は無事にこなされていくのであった。
~MAOU LIFE 7日目~ 終