MAOU LIFE
~MAOU LIFE 9日目~

今日は天帝と魔王による会議の日。内容は次回の決議(という名のトップ同士の戦争)の為の意見提出、また人間界に対する条約の変更申立(魔界側)、魔界への輸出品の一部値上げ(天界側)である。会議の場は天界の神王城敷地内、白百合庭園。

天帝「いつも無理を言ってすまないな、ゼクス」
魔王「なに、我らもいつも譲歩してもらっているからな、お互い様だ」
天帝「では…次の決議を楽しみにしている」ニコッ…
魔王「そうだな、存分に戦おうぞ?」ニヤッ…

ゼクスとアーリアは和やかな雰囲気で話を終わらせ、互いに握手を交わした。

死神「では撮りますよ?はい、ポーズ」パシャッ…
天使長「撮りますねー?あ、アーリア様、カメラ目線でお願いします。では1…2の3」パシャッ…

その様子を死神デスと天使長リンデが写真におさめる。これは両界の新聞に載せる為のものだ。

天帝妃「では…これにて天界・魔界両首脳会議を終了させて頂きます」

天界での議長を務める天帝妃クルスが話し合いを締める。彼女はアーリアの妻で、アーシュと違い誰がどう見てもThe 天帝妃といった、美しさは勿論、気品に溢れた華やかな女性である。

魔王「時にアーリア、この後空いているか?」
天帝「軽く事務作業が残っているが、10分もあれば終わるから後回しにしても良い。どうした?」
死神「魔王様、ダメですよ?仕事まだ残ってますよ?」

デスはこの後の展開が読めた為、ゼクスに注意する。

魔王「久しぶりに…行かぬか?」クイッ…
天帝「ほぅ、釣りか♪久しぶりに行きたいな」
死神「魔・王・様!帰って一緒に事務仕事しますよ!」

ゼクスはデスの注意を無視して話を進めるが、デスは再び強めに注意する。

天帝「何だ…仕事が残っておるのではないか」ションボリ…
死神「申し訳ありません、天帝様」

残念そうなアーリアをクルスはホッとした様な表情で見つめる。

魔王「決算書であろう?それは経理部長とアーシュに予め頼んでおいたから問題ない。さぁ、アーリア!行くぞ!大物が我らを待っている!クルス、アーリアを借りるぞ!」ガシッ…バサァ…
天帝「っ…!うおっ!」
死神「ちょっ…!魔王さっ………逃げられたか…」
天帝妃「あなたっ!?」

ゼクスが突然アーリアの襟元を掴んで、そのまま飛び去っていった。デスは慌てて大鎌を召喚して鎖を飛ばしたが、ヒラリとそれをかわされた。クルスも突然の事で驚いていた。

死神「天帝妃様!魔王様が大変申し訳ありません…!!」ペコペコ…
天帝妃「…あ、え…?あ、いえ…お気になさらないで良いですよ?」ニコッ…

デスは慌ててクルスに頭を下げ、上司の行いについてし謝罪する。クルスはハッと我に返り、頭を何度も下げるデスに優しく微笑みかけた。

死神「まったく…魔王様は…戦い以外の仕事には本当にやる気が無いというか…困ったものだ…」イライラ…
天使長「デス殿…大変ですね…」

リンデがデスの苦労を察し、それをいたわる。

死神「本当ですよ…しかし、天帝様はいつ拝見しても出来たお方ですね。仕事は早いし、真面目だし、うちの魔王様と取り替えてほしいですよ」
天使長「そうですね…確かにアーリア様はとても真面目で優れた偉大なお方です。しかし、魔王様もそれに勝るとも劣らない偉大なお方ではありませんか」ニコッ…
死神「…まぁ、確かに民衆の事を何よりも一番に考えておられる点についてだけは尊敬していますが」
天使長「それだけではなく、先程の決算書の件もそれほど重要な仕事を自分ではなく周りに任せる辺り、周囲を絶対的に信頼している証拠でしょう?その点アーリア様は重要度の高いものは下に任せませんから、羨ましく感じます」
死神「リンデ殿…」

相手の上司を分析し、それを褒めるリンデにデスは頭を下げた。そして思った、「リンデ殿こそ、理想の女性だ!」と。

死神「リンデ殿……こ、この後時間空いておりますか?」
天使長「え?えぇ、今日の仕事はこれで終わりましたが…」
死神「よ、宜しければ食事などご一緒出来ますか?」
天使長「私は構いませんけど…お仕事が残っているのでは?」
死神「明日まとめてします。そ、そ、それに…」
天使長「それに…?」
死神「い、いえ、天帝様の話や天界の仕事?…とか色々聞きたいなぁ…なんて思いまして、ハハハッ。今後の参考にもなりますし」

こうしてデスは生まれて初めて仕事をサボった。そしてその日の夜、玄関の前に「すまん」と書かれた貼り紙と巨大な魚が置いてあった。

~MAOU LIFE 9日目~ 終
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