コタツムリ【短編】
研究をするには、まず生きた個体を見つけなければならない。だがこれはなかなかに大変な作業だ。

何しろコタツムリの生態は全然明かされていないのだから。

暖かい間はどこかに姿を隠し、寒くなってくるとどこからともなく現れるという。

そんなあいまいな情報だけを頼りに、アチラで目撃されたと聞けばそこへ訪れ、コチラでウワサになったと聞けば行って話をきいた。

秋の涼しくなり始め頃からコタツムリ探しをスタートし、ようやく最初の生きた個体を発見できたのは、すっかり冬も深まった頃であった。

これでやっと研究を始められると安堵したが、コタツムリとは見れば見るほど奇妙な生き物だと初めて知った。

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