毛布症候群

冷蔵庫から冷えた梅ジュースを出してグラスに注ぐ。

お母さんがわざわざ作ってくれていた。飲むときは温めてからね、と釘を刺されているけれど今は時間の方が大事なのでこのまま頂こう。

「あ、良いなー私も飲もうっと」

ソファーから立ち上がった瞬間、家の鍵ががちゃりと回る音がした。
はっとした顔をして玻璃がテレビを消して、足音を極力立てずに階段を上っていく。

……ばかだ。羊佑以上だ。

「ただいま、今日早いのね」

「今日から中間試験だから」

「玻璃も帰ってきてるでしょう? 勉強してる?」

あたしに聞かれてもなあ、と思いながら、さっきまでここにいましたとは言わない。

庇っているつもりはないけれど、言ってまた親子喧嘩が始まるのは本意じゃない。


< 100 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop