毛布症候群

何故かドキリとした。

一緒に羊佑を思い出したから。

黒くて艶のある髪の毛を緩く結んでいる。白いブラウスと水色のカーディガン、紺色のスカートに黒のトートバッグ。いかにも文系出身で文系を教えていそうな、柔らかい空気を持つ女性。

「えーうそ」

「嘘よ。登校途中に食べ歩きしないように」

こんな声なんだ。
身長はあたしより少し高い。

「神津さんもね」

完全に油断していて、こちらを見た顔に驚いてしまった。
視界の端で紺のスカートがふわりと揺れる。

「先生、なんで硝子の名前知ってんの?」

「荻野くんからよく聞いてたの。数学講座に荻野くんっているでしょう?」

マオからの質問にあたしへの質問で返す。


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