毛布症候群
春、それは始まりの季節。
それに気付いたのは保育園のお昼寝の時間だった。一人ずつお気に入りの毛布を掛けて眠っていた。
眠れない子は先生が寝かしつける。あたしはそれを知っていたから、眠ったふりをして、起きていた。
保育園の外は雨が降っていて、午前は折り紙を折った。折りかけの鶴が机の上に転がっている。
隣で友達が眠っている。
あたしもお昼寝がしたくないわけじゃない。でも、雨だから。
雨の日は、近くで眠る人の夢がよく伝染る。
「神津さん、呼ばれてるよ」
授業の合間の休みに読みかけの小説を開いた時だった。クラスメートに言われて顔を上げる。教室の入り口近くを見ると、こちらを見ている顔があった。