毛布症候群
きょとんとしたまま受け取る。
「おお」
「なに」
「絶対貸してくれないと思ってたから。ありがとう」
とても失礼な一言にテキストを奪い返してやろうかと思ったけれど、爽やかに笑顔を見せてきたから止めた。
自分の教室の方向であろう方へ歩いていく。
あ、とそこで気づく。
名前聞くの忘れてた。
マオが眉を顰めた。
「僕が知るわけなくない? 文系の僕が」
と言いながらもこの前化学で満点を取ったマオ。
「大体において数学の講座取ってる物好きなんてそんないないじゃん。出欠取ってる時に名前とか覚えないの?」
「全然」
「硝子こそ寂しい奴じゃんか」
ここにも居たよ、失礼な奴。