毛布症候群
準備室の前の扉で止まる。
返事を待っていたわけじゃない。だからあたしがドアノブを握った。
「信じる」
「え?」
「神津、泣きそうだから」
え、と空いている方の手を目元に持って行った。泣いてるじゃないんだから、涙が出ているわけじゃないけれど、確認したくなった。
準備室の中は金曜日と何も変わっていない。
「嘘」
「は?」
「泣きそうってのは嘘で、信じるってのは本当」
羊佑は持っていた段ボールをおろして、上の方にある小窓を開けた。
光が差し込んだ。
「他人の夢をみるって、なんか疲れそうだな。良い夢ばっかじゃないと思うし」
「……うん」
「教えてくれて、ありがとう」
ぽん、と前髪に手が降りた。