毛布症候群

この人に歯が立つわけがない。
敵うなんて、思ってもないけれど。

「今帰り? 数学講座って遅くまでかかるのね?」

「いえ、ちょっと友達と、小塚くんと話してて」

帰ろうとしたところで、校門にマオがいた。知らない女子と話していて、「俺、行きますんで」と敬語で別れた後、あたしの方に来た。

たぶん、先輩。たぶん、告白されていた。

マオが自分のことを「俺」と言うときは、怯えているときだ。

「仲良しね」

呑気な声に、どう返事したものかと思う。

「先生、今日車は?」

「ちょっと使われていてね、今日は電車なの」

使われているって、家族の誰かだろうか。
天川先生、妹がいそう。



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