毛布症候群

にこりと笑う。花のように笑うひとだ、と思う。

傷付けることしか出来ない硝子の破片が、美しく咲く花に敵うわけがないんだ。

「もちろん、私で良ければ」

天川先生が肩を竦めて見せた。

星が見えない。明日はきっと雨だ。
雨が降ってほしいと思った。

「先生は好きなひといます?」

「すごく唐突ね」

「先生美人だから。あたし友達少ないんで、そういう話するひと居なくて」

不審感を抱かれると気まずくなりそうなので、それらしい理由をつけた。マオと恋バナをしても、マオが一方的に面白がるだけだ。

「いるわよ」

まさか簡単に聞き出せるとは思えなかったけれど。

さらっと言って退けた先生は鞄から定期を出す。いつの間にか駅についていて、あたしも鞄のポケットから定期を出した。


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