毛布症候群

あ、無理して笑っている。少し困ったような笑みにそれを感じて、目を逸らした。

変えたのはあたしだ。

「気遣わなくて良いから」

いつか同じ台詞を羊佑に言わせたことがあるな、と思い出す。

先に廊下を歩いた。ついこの間までは他人だった。今だって他人に変わりはないけれど。

「神津、待って」

腕を掴まれた。追い抜いていく数人のひとがちらと振り返った。

「気なんて遣ってない」

「こうやって弁明するところが気遣ってんの」

「人の心読めないんだろ」

何を言ってるのか、と思った。
羊佑はゆっくり腕を離す。あたしもそうだけど、羊佑も国語の偏差値低いな。

「決めつけんなよ。神津は俺に気を遣わなくて良い、俺も神津に気なんて遣わない。友達なら、そうだろ」



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