毛布症候群

玻璃かな、と思って振り向いた。バシッと響いた音と、じんわりと熱を持つ頬。

一瞬何が起こったのか分からなくて、舗装されたアスファルトの上を視線が泳いだ。

「ちょーしのんな!」

言われた声が女だった。知らない声だけど、微かに震えていた。

体勢を戻して走っていく後ろ姿を見る。うちの制服と、見覚えのある髪型。
マオに、たぶん告白していた先輩だ。

落ち着いて頬に触れると、頬というか顔の輪郭の方が痛かった。耳を叩かれなくて良かった。

ちょーしのんな、か。

一般的感覚として、分からなくない。あたしとマオは恋人じゃないけれど、女子と男子だ。あたしは友達が少ないけれど、マオは違う。

傍から見たら面白くないのだろう。だからって、誰が悪いのだろう。

誰が、何を知っているというの。



< 76 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop