毛布症候群
マオが両手を上げる。降伏ポーズ。
「勘弁してよ。羊佑からもなんか言ってやって」
「今の場合、傷ひとつついてないのは小塚だけだと思う」
「うわあ、数学講座組の底意地の悪さが見えた」
「わかった、マオを引っ叩いたら手打ちてことね」
あたしは手を合わせた。ええ、とマオが嫌そうな顔をこちらに向ける。
体操服を着た一年生が横を通り抜けていった。
「暴力はんたーい」
手を伸ばしたマオに羊佑が呆れた顔をする。
階段を上がってすぐ羊佑の教室がある。
「荻野、つぎ数学だぞ」
「あー」
教室から出てきた男子に言われて羊佑が声を漏らした。マオがこちらを見たけれど、あたしには何か分からないので首を傾げる。
「次眠ったら1欠席にされる」
こちらを向いて言った。