@ラビリンス

「朔菜っ!!」


男達が居なくなった途端に力が抜け、気づいたら地面の上に座り込んでいた。

『あっ…。』

目の前にいる見知らぬ男の人はしっかりと私の目を捉えている。

(お礼を、言わなきゃ……!)


そう思っているのだがすぐに言葉が出ない。先ほどの恐怖のせいだろうか。

「大丈夫、別にお礼を言われたくて庇ったんじゃないから。」

彼は優しく微笑むとそっと手を差し伸べてくれる。


「初めまして、朔菜ちゃん。俺は2クラスの荒木晴人(アラキ セイト)です。」

晴人と名乗った彼の手を掴みゆっくり立ち上がる。


『神野…朔菜(カミノ サクヤ)です…。』


晴人さんは私にニコリと微笑み、隣にいた美衣菜に"君は?"と問いかける。

「田山美衣菜(タヤマ ミイナ)です!」

美衣菜は私のスカートについた土を払いながら答えた。


「朔菜ちゃんに美衣菜ちゃん。気を付けてね、ああゆう大人は少なくない。ここは人気も少ないし女の子にはオススメできないな。」

控えめに忠告してくれたんだろう。
晴人さんは頭を掻きながら少し困った顔する。


「すみません…教室ってあまり落ちつかなくて。」

「あぁ、うん。それは俺もだからよく分かる。……あっ、そうだ。」


何かを思いついた様に晴人さんは持っていた小さめのカバンから用紙を取り出した。

「ここ良かったら使って?」

渡された用紙に書かれていたのは


『「多目的ルーム?」』

(こんなところあるんだ…。)

「ここなら今はあまり人が出入りもしてないし、男女で分かれてるから安心だと思う。」


『ありがとうございます…。』

―――キ-ンコ-ンカ-ンコ-ン

「あっ!お昼休み終わっちゃう!」


「あぁ…それじゃ、気を付けてね二人共。」

晴人さんはそう言うと小走りで校舎の方へ走っていった。


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