@ラビリンス
(言った。言ってしまった。)
吐き捨てるように人に暴言をぶつけるなんて兄以外にはしないことだ。
(やばい…凄いこと言った気がする……。)
「………っふ。あっはっはっははは!!!」
暫くの沈黙を破ったのは彼の笑い声だった。
「君、すんごい怒って何言ってんの?」
ニヤニヤした顔で面白そうなものを見るような目で私を見る。
『わ、私は気持ちもないクセにそんな事をしたあなたが悪いと思います!!』
『誰だってタイプの人や好きになってほしい人にそんな事されたら、気になっちゃうし好きになるに決まってるじゃないですか!!!』
俯き加減ではっきりと意見を放つと彼はワントーン下がった声で静かに話す。
「あぁ、そうなの。」
一歩だけ彼が私の方へ近付いて、腕を強く引かれる。
『……っっ!!!!!』
一瞬反射的に目を瞑り、唇に温かい感触が伝わった。
―――彼にキスされている。
抵抗しようと声を出そうとすればそこに容赦なく彼の舌が入ってきた。
『はっ……うぁ……ううんっ…!!』
滑らかな舌遣いに全身が力を失う。
いつの間にか近くの壁に押さえつけられて、腰あたりでは彼の片方の手が厭らしく動いている。
『あっ……うんんっぁあ……。』
(駄目、どうにか逃げなきゃ…!)