@ラビリンス
『それにしてもこんな時間にいるってことは今日仕事はお休み?』
兄は大手化粧品メーカーで働いており、いつもこの時間帯は家を出ているはず。
「ああ、今日は家でできる仕事だからな。」
コーヒーを啜りながら、かけている眼鏡を曇らせる。
『ふーん。そうなんだ。』
特別楽しい会話をするわけでもなく朝ごはんを食べ終えた。
『ごちそうさまでした。』
「はーい。」
食器を片付けて、兄も席を立つ。
「今日は送ってやるから。」
私の頭を撫でて玄関へ向かう兄。
『………変に優しいと嫌って言えないじゃん。』
兄の見事な飴と鞭に敗北した私だった。