@ラビリンス
―――怖い。
本当はその気持ちでいっぱいだった。
(ここから離れよう…。)
私と美衣菜は立ち上がり、シートを畳み立ち去ろうとすると一人の男に手首を掴まれた。
『…っ!!離してっ!!』
男は私を力で引き寄せると逃げないように腰を抱く。
「んー…近くで見るともっと可愛いじゃん。」
「やめてください!!離してください!!!」
ニヤニヤと笑う男に美衣菜が叫び声に近い声をあげる。
「強気な子もいいけどさ…女の子はやっぱり可愛く鳴くのが一番よぉ…?」
顎を掴まれ距離が縮まる。
あまりの恐怖と気味の悪さに私が強く目を瞑った瞬間―――
顎にあった感触と男の気配が消えた。
「それってセクハラですよ。」
目の前に写ったのは見知らぬ人に羽交い締めにされた先ほどの男の姿だ。
『えっ…?』
「いってぇぇえ!!てめぇ!!誰だコラァ!?」
「おい!!ガキ……何してんだ、ああ!?」
連れの二人がすぐさま彼の元へ近寄る。
「…まだやるつもりですか?これ以上はこの学校だけでなく法律上、罪に問われる場合がありますよ?」
冷たい声でそう言うと薄らと笑みを浮かべた。
「僕達はもう大人なんですよ。」
その言葉に男達は顔を引き攣らせ、そそくさと逃げ去った。