語り屋の 語りたる 語り物
1 語り屋
街角の陰、橋の下、道の端。
少し人目を引いたところに、
語り屋は、いつの間にかいる。
彼は構えをつくらず、流浪の身であることは知られている。
しかし、それ以上の詳しい正体は不明。
誰かが、なぜ家を持たないのか、ときくと、
「これでも、お前らよりは長く生きているんだ。いらねぇんだよ、そういうもんは」
よく通る、ちょうど良い低さの声で放ち、豪快に笑った。風貌から想像できる通りのものだった。
彼の姿を見た者、彼の声をきいた者は、不思議と吸い寄せられるように集まる。
語り屋の耳かざりがギラリと光り、揺れた。
その光に似た、鋭い眼光を周囲に飛ばしながら、
豪快に語りだす。