語り屋の 語りたる 語り物
歳は20歳前後。
北の国民らしい、白い肌、金の髪、少ない物言い。
加えて、高い鼻、すっとした頬。
切れ長でも大きい眼は、
薄いエメラルド色で、鋭い光が宿っている。
高身長で、鍛え上げられた肉体は、
いつもしっかりと、ローブとマントをまとっていた。
出るところへ出たら、女がわんさか群がるだろうが、
恐らく本人は全く興味がないのだろう。
冷酷無慈悲な取り仕切りで、数々の功績を残し、
いつしかこの辺りの奴隷商団を牛耳ることになった今、
人々は畏怖を感じていた。
しかし、奴隷商人より以前の
彼の身の上話は、誰もきいたことがない。
アムスも、きくつもりもないし、
きかれたこともない。
殆ど素性を知らないなかでも
ついていこうと思える何かがある。
アムスは、イーザのようにはなれないな、と思いながら
先輩達の言葉に耳を傾けていた。