語り屋の 語りたる 語り物
これ以上の乱暴をするつもりはなく、
イーザは、女の身体を再び寝かせた。
全てを悟られた女は、ぐったりとしたまま、顔を背けた。
イーザは立ち上がって、ズボンや下着の布を手で絞って水を切り、
黄金色の髪を無造作に束ねて、
女を一瞥した。
この女の境遇は決して生易しいものでないだろうし、
これからも幸薄い生涯を送っていくだろう。
このままでは。
「…戻れ」
イーザの低い声に、女はハッとして眼を合わせた。
宝石のような赤い瞳が潤み、涙が頬を伝った。
「それか、やれるものなら生きながら逃げ切れ。
死に安息を求めるな。
人の生き様は死に様で決まる」