語り屋の 語りたる 語り物
アムスは、険しい顔で戻ってきたイーザをみて、
隣をそっとあけると、
「今宵は星が綺麗だ。
俺が前半の見張りをしますね」
とだけ言って、夜空を見上げた。
「あぁ、助かる」
イーザは、1つ深呼吸をして、アムスの隣で寝転んだ。
下着のなかの、背中にある古傷が疼く。
「明日は、マッダーラと取引を行う」
アムスをはじめ、焚き木を囲んでいた商人はギョッとしてイーザをみた。
「少し前に伝書鳩がきた。
今日の収穫は、
粗方マッダーラのものとなるだろう。
道中も厳しくなる。
今宵は、よく休め」
「マッダーラってあの、サーカス団の団長のマッダーラ…だよな」
1人の商人が、堪り兼ねたようにきいた。
「そうだ。」
団員は基本的に奴隷で構成されていて、
奴隷どおしや、奴隷と動物との殺戮を
一大ショーとしている
史上最悪の
血と狂気のサーカスだ。