語り屋の 語りたる 語り物





奥の一角の部屋に案内され、通される。

照明は暗く、なかなか目が慣れなかった。



「…夜の街に、朝イチでくるとぁ…礼儀を知らんやつだな。あ?

まあいい…久しいな、イーザ」


部屋に焚き敷かれた香と同じような、ねっとりとした口調。
その部屋の主のマッダーラのものだった。

でっぷりと脂ぎった肉塊を、
悪趣味なテロテロとした服で包み、

赤い椅子に座り、赤いドレスをきた女を侍(はべ)らせて、

マッダーラはグラスのなかの水を飲み干した。


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