語り屋の 語りたる 語り物
あくる朝、イーザは仲間たちと合流し、身支度を素早く整え、「愉楽の弾頭街」から出て行った。
あの後から今に至るまで、サーシャの姿をみかけることはなかった。
荒野で荷馬車を走らせ、太陽が昇る頃に残った奴隷たちに餌を与えながら、今度の届け先と商品の補充について語り合った。
そして、小金持ちがひしめく小さな街に着いたときに、珍しい種の伝書鳩がイーザのもとにやってきた。
その号外の伝書を読むイーザに、尋常ではないものを感じ取った商人たちは、息を潜めて言葉を待った。
それは、凶報だった。
「……マッダーラが、何者かに殺された。ナイフで心臓を刺されたようだ」
空気が凍りつく。
巨漢が血に染まり、白目を剥いたマッダーラの死体を、その場の全員が想像した。
彼の死を悼むことはなかったが、喜ばしいものではなかった。
「…もしかして、俺たちへの疑いが」
「あり得る」
ルンの言葉を遮り、イーザは元来た道をギラリと睨んだ。