語り屋の 語りたる 語り物
殺された朝と同時に旅立ったギルド。
しかも、イーザはその晩、コロシアムの中で夜を明かした。
ルンの言う通り、疑惑はこちらに向かってくるだろう。
だが、あの「愉楽の断頭街」を統率していた主が死んだとなると、
いくら奴隷商人とはいえ、現時点で再び足を踏み入れるのはかなり危険だ。
自分たちの無実を立証しようにも、どうしようもないなか、
当然行き着く「誰が殺したのか」という疑問が浮かび上がる。
奴隷。
イーザの頭の中で、
サーシャの姿がよぎる。
「…今、断頭街に迂闊にに近づくのは危険だよな」
全員が考えていたアムスの言葉に、言葉なくして同意した。
「先約を済ませるぞ」
顔色の悪いアムスを目端に捉えながら、イーザは短く言うと、ローブを翻して先へと進んだ。